| +Baby's breath+ |
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授業の終了を告げるチャイムが鳴り今日の講義が終了した。 オレはこの後何の予定もないし、そのまま帰ろうと思い教室を後にした。 大学の校舎を出て門に向かって歩いていると声を掛けられた。 「デュオ!もう帰るの?」 同じクラスのメアリーだ。 「この後暇?よかったら買い物行かない?」 メアリーは入学してからの友達だ。 女の子に戻って違和感ありまくりだったオレを気にする風でもなく、さり気なくフォローしてくれる。 言ってみればヒルデみたいな存在だ。 「ああ、いいぜ。」 彼女の前ではオレも自分を作らずにいれる。 他愛もない会話を楽しみながら出口に向かっていると、門の方で人だかりが出来ていた。 「ねぇあの人すごくカッコよくない?」 「誰待ってるんだろ?」 「声掛けてみよっか。」 そんな会話が聞こえてくる。 オレは気にせずにそこを通り過ぎようとして……出来なかった。 「デュオ?」 どうしたの?といきなり足を止めたオレにメアリーが声を掛けてくるけど、オレは答えられなかった。 オレが足を止めたのを確認してこちらに歩いてくる人物。 「デュオ。」 「ちょっとデュオ、知り合いなの?」 メアリーが小声で聞いてくる。 「……何で?」 それだけ言うのが精一杯。 「五飛に聞いた。」 何でコイツがここにいるんだ? もう忘れたと思ってたのに、今度偶然会ったとしてもちゃんといつもの自分でいられると思ってたのに。 (何なんだよこの不意打ちは!) 「デュオ、ちょっと聞いてるの!」 「あっ、ゴメン。えと、知り合いなんだ。」 「知り合い?高校の時の?」 珍しくメアリーが興味津々に聞いてくる。 「えーっと、そう高校が一緒だったんだよ。クラスメイト!」 嘘じゃないぞ、と心の中で付け足して。 オレ達の遣り取りを黙って見ていたヒイロが声を掛けてきた。 「話がある。」 (今更何を話すことがあんだよ) それに心の準備がまだ出来てない。 「悪いけどこれから……。」 「デュオはこの後予定ないそうですよ。」 メアリーが横から口を挟んできた。 (おいおい……) 軽く睨んで見るもののお構いなしに話を続けてる。 「初めまして、デュオの親友のメアリーです。」 「ヒイロ・ユイだ。」 お互い握手なんか交わしちゃってさ。 「ほらデュオ、折角会いに来てくれたんだからぼさっとしてないで行っておいでよ。」 オレの背中を押しながら笑顔で言ってくれる。 「後で話聞かせてよね。」 やっぱりそうくるのか……。 ヒイロに笑顔で別れを告げて去って行くメアリーをぼーっとした気持ちで見送った。 「とりあえず移動……。」 横に並ばずに黙って後ろを着いてくるヒイロに少しほっとしながらオレ達は近くのカフェに入った。 二人向かい合って座ったまではいいけど、何を話せばいいんだ? 思いがけずヒイロが尋ねて来てくれて本当はすごく嬉しいんだけど、心の準備が出来てない。 何を話せばか……前はそんな事考えて話してなかった。 ウエイトレスが飲み物を置いて去って行く。 オレはこの無言の緊張から逃れたくてアイスティーに手を伸ばした。 それを見てヒイロもアイスコーヒーに手を伸ばす。 久しぶりに見るヒイロは少し大人っぽくなったと思う。 最後に会った時よりも背が伸びてるし。 (そういや五飛も伸びたよなー) 自分はあまり伸びてない事を思うと何だか置いて行かれた気分だ。 仕方ない事だけどその事実が寂しい。 気持ちも少し落ち着いたし、会いに来てくれたのが嬉しかったし、オレから話を切り出した。 「話って何?」 昔のオレだったらもっと愛想がよかったかもしれない。 「五飛から聞いたんだろ?」 でも今は違う。 「わざわざ確認しに来たのか?」 もう男だったデュオ・マックスウェルはいないから……。 ヒイロはさっきから一言も言葉を発しない。 けど顔の表情と気配が怒ってますと主張している。 (無言で怒られても……) その気配に今度はこっちが黙る番だ。 「何故隠してた?」 「別に……隠してた訳じゃ……。」 「俺だけだ。」 「何が?」 「五飛もカトルも、トロワでさえ知っていた。」 ………どうやら自分だけ知らなかった事に納得がいかない様子だ。 (ヒイロにだけ言わなかったから怒ってるのか?) ヒイロだけじゃない、お嬢さんにも言ってない。 この二人の事は忘れようって思ったから言わなかった。 それが今頃になって突然現れて怒られても……。 (なんか嬉しいかも) 自分から会いに行く事もないし、ましてやヒイロから会いに来てくれるなんて事は皆無だと思ってた。 それなのにいきなり会いに来たと思ったら勝手に怒ってて。 どれだけ大人びてもムスっとした態度を隠しもせずにいる様子は昔と変わってない。 そんなヒイロに緊張なんてどこかに飛んで行ってしまった。 思わずクスっと笑ってしまって、またヒイロの表情が険しくなる。 「ゴメンゴメン。……言わなかった事は謝るよ。」 一呼吸置いて。 「でもお前オレの事嫌いだろ?だから別に言わなくてもいいかなって。」 会っても愛想悪いし、会話成立しないし、と付け加える事も忘れない。 「それなのにオレ実は女の子なんです!なんて言ってもお前、質の悪い冗談だと思って信じなかっただろ。」 ヒイロは腕を組んでオレの話を黙って聞いている。 「それに……。」 (知った後の反応見るのが恐かったなんて言えないよなー) 「何でもない。」 「それに何だ?途中でやめるな。」 こういう時だけしゃべるよなコイツ。 「だから、対応とか接し方とか困らないか?」 困るだろ普通は……ってコイツは普通じゃないけど。 「……何か困る事があるのか?お前は今でもデュオ・マックスウェルなんだろ?」 だったら何も変わらないとばかりのセリフだ。 (嬉しい事言ってくれるぜ……) 心のどこかで思ってた、ヒイロは自分が男でも女でもきっと態度は変わらないって。 それでもヒイロに知られるのが一番恐かった。 だから今のは本当に嬉しかった。 「口じゃ何とでも言えるぜ?」 「どう取るかはお前次第だ。」 「じゃあ付き合ってくれ!」 (うわーオレ今何て言った?) これじゃお付き合いしてくださいって言ってる様なもんじゃねーか。 やばい!何か言い訳しないと。 「えっと、ほらアレだ!今日ホントは出掛ける予定だったんだ。だから今度お前が付き合ってくれよ!」 よし!焦ってワタワタしながらだけど何とか取り繕う事ができた。 「ダメか?」 よくよく考えてみればヒイロと一緒に出掛けた事なんてなかった。 ほとんど話しもしないのにいきなり付き合えはなかったよな……。 内心ドキドキしながらヒイロを窺った。 「あまり時間は取れないかもしれないが……それでもいいか?」 そうだよな、ヒイロはお嬢さんの護衛とかプリベンターの仕事で忙しいんだよな。 それでもこうやって時間を空けてオレに会いに来てくれたんだよな。 また嬉しさが込み上げてきて顔が勝手ににやけてしまう。 「ああ、いいぜ。」 ヒイロにも色々都合があるだろう。 オレはテーブルの端にセッティングされていたナプキンを1枚取って、そこに携帯のナンバーを書いた。 「お前の方が忙しそうだからさ、時間空いた時にでも連絡してくれよ。」 そう言ってヒイロの前にナプキンを置いた。 ヒイロはナンバーを確認した後、わかったと言ってそれをポケットに仕舞った。 これでヒイロとまた会える。 ちょっと苦しい誘い方だったけど思い切って言ってよかったと思う。 ヒイロは仕事の合間を縫って会いに来たらしく、時間があまりなかった。 もうちょっと話してたいけど、仕方ないよな。 「連絡する。」 そう言ってヒイロは伝票を持ってカフェを後にした。 一人になってさっきのやりとりを思い出してると知らずに笑みが零れてくる。 (さっきまでここにいたんだよなー) 目の前の空のグラスがそれを証明している。 もう会わない、忘れようって思ってたのに……また会う約束なんかしてしまって。 それを嬉しいって思う自分がいるんだから仕様がないなと思う。 会ってもっと話したい、そう思うだけならいいよな……。 あとがき 女の子デュオ話第2弾! あまりにも久しぶりすぎて違和感ありまくりな感じですが、そこは軽く無視で。 やっとヒイロさん登場ですvv←セリフ少ないですけど(^-^;) 本当は五飛とヒイロの会話とか入れたかったんですが、長くなりそうなので断念(>_<) またの機会にでも書こうかなと思います。 結局忘れようって思ったのに忘れられなかったデュオさんです。 次回は二人でお出掛け編になりそうです、多分。 デュオにしてみれば初デート!って感じですかね(笑) 2007.02.22 葵 |